永倉万治 年譜(45)
永倉万治 年譜(45)

永倉万治 年譜(45)・1991年

2010/03/28

   ☆ 1991年(平成3)・ 43 歳(小説家時代)

 【社会の動き】

 流 行:若貴、火砕流、重大な決意、損失補填、僕は死にましぇ〜ん、地球にやさしい。

 東京の電話局番が「3」を加えて4桁(1月)、湾岸戦争に突入。砂漠の嵐作戦(1月)、福井・美浜原発で放射能汚染(2月)、広島で、建設中の新交通の橋げたが落下、11台の車を直撃(3月)、成田エクスプレス開通(3月)、湾岸戦争終結(4月)、自衛隊初の海外派遣、ペルシャ湾で機雷除去(4月)、信楽高原鉄道で正面衝突事故、死者42人、重軽傷者478人(5月)、横綱千代の富士の引退発表(5月)、雲仙・普賢岳で大規模火砕流(6月)、トリカブト疑惑容疑者、別件で逮捕(6月)
 エリツィンがロシア共和国初代大統領に就任(7月)、「悪魔の詩」の翻訳で筑波大助教授、殺害(7月)、総額2400億円の不正融資事件で尾上縫を逮捕(8月)、東京・世界陸上の100mで、カール・ルイスが9秒86の世界新(8月)、ソ連が、バルト3国の独立を承認(9月)、台風19号で青森のりんごが大被害(9月)、宗門が創価学会を破門(11月)、宮沢りえのヌード写真集「Santa Fe」発売、売切れ続出(11月)、足利・女児誘拐殺人で菅家利和を逮捕(1993・一審で無期懲役、2000・最高裁で確定、再審で2010・無罪確定)(12月)

 【生活 年譜】

  リハビリを続けながら、車の運転や水泳などいろいろなことに挑戦をする。観劇や飲酒にも前向きに取り組み、病気前の生活を少しづつ取り戻す。
  単行本『陽差しの関係』の成功で、社会復帰を果たし、少しづつ執筆依頼が増えてくる。
  執筆に関する夫人との共同作業もお互いが役割分担を認識し、余計な遠慮が減り、スムーズに進むようになる。
  後に単行本『ラスト・ワルツ』となる連作小説や、脳溢血体験を綴る「平成元年闘病記」、『荒木のおばさん』となる「流れの外から」などを精力的にこなす。
  また、長期連載となる『CUT』のエッセイもはじまる。

  ≪(原稿作成の共同作業で、私は)始めの何カ所は、いちいち永倉にたずねていた。しかし、それは、ただでさえ自信のない彼に「お前の文章はダメだ」と宣告するようなものだった。(略)
  私は、思い切って断りなしに原稿に手を加えてみた。(略)(そのことを知ってか知らでか)さいわい、彼は何もいわなかった。(略)
  登場人物の顔つきから服装、彼らが歩く町並み、酒場の情景などなど、一つ一つ確かめたわけではないけれど、思い描いているものは同じだったと自信を持っていえる。
  もちろん、ストーリーの大きな流れにはまったく関与しない。私の仕事は、ただ目の前の原稿を直していくことだけだ≫作133『万治クン』p180

  2月 『陽差しの関係』が第十二回吉川英治文学新人賞の候補作品に選ばれる。

  ≪第12回 平成2年/1990年度 (平成3年/1991年3月6日決定発表)
   受賞  伊集院 静 『乳房』 平成2年/1990年10月・講談社刊
   受賞  大沢在昌 『新宿鮫』 平成2年/1990年9月・光文社/カッパノベルス
  候補  永倉万治 『陽差しの関係』 平成2年/1990年9月・講談社刊 他
  【選考委員】 井上 ひさし、尾崎 秀樹、佐野 洋、野坂 昭如、半村 良≫ネット「付録 吉川英治文学新人賞 受賞作候補作一覧」より

  3月 伊豆・畑毛温泉に1週間ほど療養滞在。体にはいいが、退屈で退屈で退屈。

  ≪三月の終り。僕は温泉に来ている。伊豆にある小さな温泉で、高血圧に効能があるといわれている。(略)
  (体の不自由は相変わらずだが、気持ちはなんでも)やっていこうと思っている。ここまでくるのに二年かかった。(略)
  午前中に一回、午後にまた一回湯に入る。そして就寝前にもう一度。(あとは何もすることがない。)(略)
  一日が長い。部屋に敷かれたままの布団の上でねころんでいる。(略)体を動かすのが億劫になってきている。そのまま横になって窓の外を眺めているだけだ≫作20『荒木……』p90(作34『大復活』p96にもある)

  7月 TBSテレビで『みんなアフリカ』を原作にしたドラマ「スキャンダルを追え!」を放映。

  ≪カメラマンの栄吉(水谷豊)には二年前に別れた妻京子(中田喜子)との間に小学四年生の息子浩(大沼誉)がいる。ある日、栄吉は夏休みに浩をどこかへ連れて行ってくれ、と京子に頼まれた。浩はアフリカへ星を見に行きたいという。旅行資金がほしい栄吉は、探偵社から頼まれた社長夫人の不倫現場を撮る仕事を引き受けた≫日本経済新聞(1991.7.15)番組紹介。

  夏  病後、はじめて酒を飲む。あぁぁぁ、死ぬほど旨い!

  ≪倒れてから、もう一生、酒を飲むことはないだろうなと漠然と思っていた。(略)
  二年目に入る頃だったと思う。季節は夏。ひどく暑い日だった。
  「ああ、ビールを飲みてえ」(略)恐る恐るコップに一杯だけ飲んでみた。(略)
  旨いの旨くないの。胸が震えるほどに旨かった。
  (飲む量は漢方の先生の言うとおりに)涙をのんで酒は一合と決めた≫作34『大復活』p157

  夏  嬬恋の山小屋へ、自分で車を運転して行く。

  ≪再び運転ができるようになってみると、どうしても山小屋へ行ってみたくなった。(略)
  (女房は反対したが、見るに見かねて)僕の父親が一緒に行こうといってくれた。それに、小学校三年生だった次男も「僕がおしえてあげるから」といいだし、かくして命知らずの三人が車に乗り込んだのである(略)
  (目の前に浅間山の)パノラマを見ながら、思わず「ついにやった」と小さく叫んだのだ。脳溢血から一年半あまり、ここまで来たんだ。やればできるんだ。僕は涙ぐみそうになりながら、山小屋まであと一息だといい聞かせ、再びハンドルを握った≫作34『大復活』p125

  夏  リハビリのため、水泳をはじめる。

  ≪ある時、水泳に挑戦してやろうと思った。山小屋から車で五分も行ったところに、プールがある。(略)
  僕は恐る恐るプールの中に入った。(略)あっ、泳げる!≫作34『大復活』p128

  ≪失われた機能を取り戻そうと、無理を承知でいろいろなことに挑戦していた。
  八年ほど前に水泳を始めた時も、右半身マヒが果して泳げるのかと、内心不安だった。(略)
  泳げる!私は夢中になってクロール(と自分ではそう思っていたが)で泳いだ。(略)
  私はうれしくてたまらなかった≫作39『…隣の…』p174

  ≪プールに週3回通う。クロールと思って泳いでいるが、自分で見たことはない。「泳ぎの後、近くの公園で30分ぼうっとするのが最高」≫『小説現代』(1990.11)「今月登場」より

  ?月 二ヵ月に一本のペースで観劇にでかける。

  ≪倒れてから二年ほどたった頃だったか、僕はもう一回(『レ・ミゼラブル』を)観ようと思った。(略)
  だんだん健康を取り戻しつつあった僕は、二ヵ月に一本のペースで観劇を続けた。(略)
  いわゆるウエルメイド・プレイの『ブラック・コメディー』『ラブ・ゲーム』『マイ・ファット・フレンド』など、とてもシャレていて、観終わった余韻がとても良かった≫作34『大復活』p169

 【作品 年譜】

  1月     ニシキヘビ(『アフィニスクルー』)(→『コロンブスの贈り物』)

  1月23日 (SPA!の開国宣言 アジア・ピープルの「当然の主張」)まさに今が、日本開国のスタートラインなんだ(『SPA!』)(→未収録)

  3月     リハビリ読書録(『ちくま』)(→未収録)

  3月20日 (別れが恐くて恋ができるか!!恋はかならず醒めるもの。)別れ上手より恋に上手になってほしい。今度の恋では”一流の男”をつかまえて。(『クリーク』)(→未収録)

  3月20日 単行本『アナタの年頃』(講談社)

  3月20日 東京オリンピック(再録)(→『昭和生活文化年代記3 30年代』)

  3月30日 単行本『ラスト・ワルツ』(角川書店)

  5月     (親展子どもたちへ)ずーっと一緒(『セサミ』81)(→『晴れ…』)

  5月25日  解説(山田詠美『僕はビート』角川文庫)

  6月10日 文庫本『ジェーンの朝とキティの夜』(角川文庫)

  7月     結婚しよう(『小説新潮』)(→『結婚…』)

  7月     フォアローゼズ(『オール讀物』)(→『おけら』)

  7月     (百家争鳴)相 撲(『室 内』)(→未収録)

  7月20日 やっぱり気になる「不思議現象」巣鴨の先生の不思議なパワーに、ただただ感謝の日々(『ELLE JAPON』)(→未収録)(未見)

  8月     (毎日笑う)いつか笑う時(『サントリークォータリー』37)(→『晴れ…』)

  8月21日 (夏の景色)プール(『朝日新聞』夕刊)(→未収録)

  9月     (ESSAY)夢で畑を耕して(『宝 石』)(→『晴れ…』)

  9?月    (?)(『AVカタログ』秋号)(→『晴れ…』)(未見)

 10月     (水彩画)僕が子供のころ大きかった、川の話(『H2O』)(→『二丁…』)

 10月15日 シャル・ウイ・ダンス(『シアターコクーン・オンレパートリー1991秋 ラブミーテンダー』公演プログラム)(→未収録)

 11月     (?)(『H2O』)(→『二丁…』「水たまりの誘惑」)(未見)

 12月20日 (コラムいまを見る)日本の”美” 外国で堂々としていられる稀有な日本人はお相撲さんだ。(『クリーク』)(→未収録)

 【連載 作品】

 「東京サラリーマン・ラプソディ アナタの年頃」 月刊『現代』 (永倉万治(作家) 画・樋口太郎)

   1月 第24話 面白くもあり面白くもなし また一年が過ぎてゆく(→『……年頃』)

 (連載名なしの連作) 『野性時代』 (永倉万治 イラストレーション・長友啓典)

   1月 大寒波(→『ラスト…』)
   3月 歌う木(→『ラスト…』)

 「平成元年闘病記」 『月刊カドカワ』 (永倉万治 イラストレーション・浅賀行雄)

   1月 第四回 (→『大熱血…』「大西さんのなわとび」)
   2月 第五回 (→『大熱血…』「六人のしゃべらない男たち」)
   3月 第六回 (→『大熱血…』「書けた!」)
   4月 第七回 (→『大熱血…』「”り”って、いえるかな?」)
   5月 第八回 (→『大熱血…』「杖一本で立ったこと」)
   6月 第九回 (→『大熱血…』「初めて家に帰った日」)
   7月 第十回 (→『大熱血…』「シンドラーズ・リスト」)
   8月 最終回 (→『大熱血…』「ついに、電車に乗った」)

 「流れの外から」 『小説現代』 (永倉万治 え・百田まどか)

   1月 荒木のおばさん(→『荒木…』)
   2月 死 神(→『荒木…』)
   3月 握 る(→『荒木…』)
   4月 のど自慢に泣く男(→『荒木…』)
   5月 衣紋掛けと釣糸(→『荒木…』)
   6月 ラグビー(→『荒木…』)
   7月 競馬場(→『荒木…』)
   8月 お母さん、美人でしょう?(→『荒木…』)
   9月 ウォーキングシューズ(→『荒木…』)
  10月 鏡を見るな(→『荒木…』)
  11月 目立たない男(→『荒木…』)
  12月 台風の一夜(→『荒木…』)

 「CUT COLUMNS」 『CUT』 (永倉万治 写真入り)

   1月 すっかり大脳を消耗させられたシュールな推理ドラマ『ツイン・ピークス』。(→未収録)
   3月 (シュルレアリスム+表現主義+ブニュエル)÷東欧=『ストリート・オブ・クロコダイル』。(→『二丁…』)
   5月 「おもしろくてためになる」。百年後、大学教材になること必至の近代風俗史ビデオ。(→未収録)
   7月 エイズもなければドラッグもない。アメリカが一番幸福だった頃のエッチのかたち。(→『晴れ…』)
   9月 30年後の「サイコ4」。恐ろしいのはA・パーキンスただひとり。(→未収録)
  11月 どこを切ってもキューブリック。今なお新鮮な20年前の暴力映画。(→『二丁…』)

 「アスリート物語」 『銀座3丁目から』 (永倉万治 イラスト=真鍋太郎)

  12月 @ (→未収録)

 【参考 作品】

  1月     今月登場(『小説現代』)

  1月4/11日 きまりにこだわらないのが、大人の女のベッドマナー(永倉万治ほか インタビュー記事)(『an・an』)

  1月10日 自分の病気、家族の病気 病気とは、長いつきあいです。(永倉夫妻 インタビュー記事)(『クロワッサン』)

  2月     今月登場(『小説現代』)

  3月     第十二回吉川英治文学新人賞候補作品発表(『小説現代』)

  5月     今月登場(『小説現代』)

  5月24日  (BOOKS'91 こんにちは)ラストワルツを書いた永倉万治さん 文・江添宏子(『朝日ジャーナル』)

  6月     今月登場(『小説現代』)

  6月     (グラフ近刊近況)永倉万治 ラスト・ワルツ(撮影・小森谷信治)(『小説現代』)

  7月15日  (テレビ番組紹介・試写室)父と子の詩「スキャンダルを追え!」 屈折した心情 水谷が好演 文・昭(『讀賣新聞』)

  7月15日  (テレビ番組紹介)月曜ドラマスペシャル特別企画 父と子の詩「スキャンダルを追え!」 (TBSテレビ=後9・0)(『日本経済新聞』)

  9月09日 (今月の小説誌)失語症から回復した小説家 永倉万治さん―稀有な体験経てより広い場所へ(文・加藤雅博)(『讀賣新聞』夕刊)

 10月20日  (私のお気に入りランキング。)脳内出血は、人の味覚まですっかり変えてしまうんだね。永倉万治(作家)病後のおでんダネ (アンケート記事)(『クリーク』)

 12月     今月登場(『小説現代』)


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