永倉万治 年譜(47)
永倉万治 年譜(47)

永倉万治 年譜(47)・1993年

2010/05/03

   ☆ 1993年(平成5)・ 45 歳(小説家時代)

 【社会の動き】

 流 行:Jリーグ、サポーター、ウゴウゴ・ルーガ、規制緩和、清貧、天の声、聞いてないよォ、お立ち台。

 EC統合市場が発足(1月)、山形・中学校でマットいじめ死事件(1月)、皇太子妃に小和田雅子さんを決定(1月)、曙、初の外国人横綱誕生(1月)、上野・不忍池で矢ガモを救出(2月)、熊本で男性患者2人を取り違え手術(2月)、江夏豊元投手が覚醒剤使用で逮捕(3月)、8億円脱税容疑で金丸信前自民党副総裁を逮捕(3月)、関西でニセ1万円札が大量発見(4月)、日本初のプロサッカーリーグ、Jリーグが開幕(5月)、皇太子御結婚(6月)、雲仙・普賢岳で大火砕流発生(6月)
 亀戸で悪臭騒ぎ、発生源はオウム真理教事務所(7月)、東京サミット開幕(7月)、 北海道南西沖地震、奥尻島沖でマグニチュード7.8(7月)、横浜みなとみらいに、ランドマークタワー完成(7月)、首都高速のレインボーブリッジ開通(8月)、フリーアナウンサー・逸見政孝が、記者会見でがん宣言(9月)、ハナ肇が肝細胞がんのため没。63歳(9月)、中国が1年ぶりに核実験を実施(10月)、ロシアが日本海に核廃棄物を投棄(10月)JR東日本株上場(10月)

 【生活 年譜】

  引き続き『CUT』の連載エッセイを執筆し、自伝小説「武蔵野アマルコルド」は9月号で完結する。
  3月にエッセイ「食後は眠い」が始まり、7月には自伝小説「黄金バット」がはじまる。
  「黄金バット」の執筆にあたり、一大決心をする。ケンカ別れして久しく会っていないメンバーに事前の取材を行なうことにする。
  相手が快く応じてくれるかどうか、失語症の残る自分に取材・聞き取りができるだろうか。結果は大成功。自信を深める。
  『小説中公』、『オール讀物』、『小説現代』、『小説新潮』などの小説雑誌からの以来も増え、”病後の復活は小説で”の望みを果たす。
  体の回復も順調にすすみ、取材旅行では沖縄、鹿児島などの遠距離もこなせるようになる。

  ≪すでに二十五年以上が過ぎて、当時のメンバーとも付き合いはほとんどなくなっていた。はたして取材はうまくいくのだろうか。
  僕は迷った。「黄金バット」を書く気運は高まっている。こういうのは、そう思った時に書かないと一生書けなくなるのではないか。不安と興奮の日々が過ぎていった。(略)
  (斎藤正一、長井八美、東由多加、下田逸郎などなど、皆、気持ちよく取材を受けてくれて、全面的に協力をしてくれた。)
  やがて連載は順調に進み、当時のメンバーたちの協力と励ましに支えられて、とうとう「黄金バット」は完成したのである≫作34『大復活』p218

  2月 寒いので体をいたわって、どこへも出かけず、家でじっとしている。

  ≪('92年)12月中旬で年内の仕事は一区切り。ただし寒い1月2月は家から出ずにじっとしているのが病後の習慣。気候に左右されて老人風≫『小説現代』(1993.1)

  4月 鎌倉へ家族旅行をする。

  ≪4月上旬、久しぶりの家族旅行で鎌倉、由比ヶ浜を訪れた。長谷の大仏の雑踏を逃れ立ち寄った神社は、タブノキの木立に囲まれひっそりとした佇まい。家族とともに、ほころび始めた桜と海を眺めて、英気を養った≫『小説中公』(1993.5)

  5月 20日、永倉作品原作のテレビドラマ「イジメっ子と親友・どちらの同窓会に行くべきか」放映。

  ≪ifもしも「イジメっ子と親友・どちらの同窓会に行くべきか」(フジテレビ=後8・0)
  届いた二通の同窓会の通知。どちらに出席するかで変わる男の運命を描く。
  細川俊之、矢崎滋、松金よね子ほか、原作・永倉万治「復讐」、監督・堤幸彦≫『日本経済新聞』5.30テレビ版ほかより

 10月 沖縄へ取材旅行。3人の陶芸家に会う。のんびり旅行に満足。

  ≪那覇空港に降り立つと、十月の終わりだというのに日差しが真夏を思わせるほど明るかった。(略)
  (陶芸家の久場政一さん、島袋常秀さん、上江洲茂生さんを取材する。)三人三様である。(略)
  沖縄旅行は、この暖かい気候と同じようにのんびりした時間がとても貴重で楽しかった。(略)僕は何も不満がなかった≫作30『食後……』p181

 11月 京都で旧友と15年ぶりの再会。

  ≪昨年の十一月、友人の I 君と京都にいった。二十年前、ヨーロッパ旅行の時に知り合った二人の女性に合う為である。(略)
  四人がこぞって会うのは十五年ぶりだった。(略)
  その夜は遅くまで僕らはもっぱら聞き役に徹し、京女の繰り出すスピードのあるおしゃべりに、腹を抱えて笑いどおしだった≫作31『二丁……』p153

 11月? 鹿児島・坊津へ取材旅行。歌って踊って、カツオ料理を満喫。

  ≪(夜、坊津に着く。そのまま宴会。)「さあ、一緒きおどいもそや、うともそや(踊ろう、歌おう)」。
  (十五夜唄、汐替節、井筒音頭などなど、)ここでは準備というものは必要ないようだ。すぐ歌い出してしまう。気持ちがいい。(略)
  「おいも、歌いもんそう」とにわか薩摩弁でいいながら、(僕は)立ち上がった。(略)
  「わっぜえか、じょっじゃった(大変上手だったね。面白かったね)」とおかみさんが大笑いしながらいった。
  こうして坊津の一夜は、心楽しく更けていくのであった≫作30『食後……』p206

  ?月 30年ぶりに中学校の同窓会に出る。

  ≪三十年ぶりの中学の同窓会に出席した。
  男子校だから、当然、おじさんばかりだが、頭がハゲて一瞬だれだかわからない奴、白髪頭で、てっきり先生だと思っていたら、同級生だとわかったり、いろいろだ。(略)
  (当時の)嫌われ者が会場に来ていたが、こっちは、三十年変わらず、やっぱり、嫌われ者のままだった≫作31『二丁……』p147

  ?月 『黄金バット』執筆のための取材で、下田逸郎に会う。

  ≪僕は『黄金バット』を書くことになり、当時の劇団メンバーと会って話を聞いていった。当然、下田逸郎にも会うことになった。(略)
  僕は下田逸郎の海辺のマンションに二晩泊まった。
  二十数年会わなかったのに、会うと十分もしないうちにお互いのことが手に取るようにわかりあえた≫作31『二丁……』p187

 【作品 年譜】

  1月     火吹き男(『小説中公』)(→『移動…』)

  1月     アパラチア(『オール讀物』)(→『おけら』)

  1月     おけら(『小説現代』)(→『おけら』)

  1月     猫(『抒情文芸』冬季号)(→『晴れ…』)

  1月20日 単行本『結婚しよう』(新潮社)

  1月21日  解説 並大抵ではありませんぜ(南伸坊『笑う大学』ちくま文庫)

  1月25日  四十歩じいさんとハイハイばあさん(書き下ろし)(週刊朝日風俗リサーチ特別局『デキゴトロジーvol.8』新潮文庫)

  2月     (フロントエッセイ「ワッハッハッの旅」)マルチェロ、ほらお家についたぞ(『ウインズ』)(→『二丁…』)

  2月25日 文庫本『星座はめぐる』(新潮文庫)

  3月     (文庫本トラベラー、13人の冒険)田舎村の情景に身を溶かして。(『エスクァイア』)(→未収録)

  3月     隣の女(『小説中公』)(→『移動…』)

  3月     森鴎外、ヘミングウェイ、理想の父親像は崩れ……。(『プレイボーイ』)(→『食後…』)

  3月10日  御存知、ミスター・ナガシマ(書き下ろし)(玉木正之『定本・長嶋茂雄』文春文庫)

  4月     (リレーエッセー)熱血運転再開記(『JAF・MATE』)(→『晴れ…』)

  4月15日 (わが母校)憧れの長嶋、バラック林立 シュミーズ姿の女に唖然(『週刊文春』)(→『二丁…』)

  4月22日 (スポーツ新聞審議委員会)東スポは時差ボケ等には最適です!(『週刊文春』)(→未収録)

  5月     海辺の生活(『小説中公』)(→『移動…』)

  5月     押切伸一、万歳!(『銀座3丁目から』)(→未収録)

  6月     (私の結婚物語)新婚旅行と機関銃(『小説新潮』)(→『食後…』)

  6月     (私のこだわり)まぜない(『ラ・セーヌ』)(→『食後…』)

  6月     (日本全国県民ギャル・埼玉県)数少ない知り合いの女の子を振り返って見ると……(『プレイボーイ』)(→『食後…』)

  6月     懐かしくもゴージャスな「グリル満天星」特製の絶品メンチカツの極意を学ぶ(取材・文/永倉万治)(『dancyu』)(→未収録)

  6月04日 単行本『晴れた空、そよぐ風』(PHP研究所)

  6月25日  解説(内海隆一郎『人びとの旅路』新潮文庫)

  7月     (住まいと私)ハッキリ言ってボロ家好き(『新しい住まいの設計』)(→『食後…』)

  7月10日 文庫本『女房のいない週末』(角川文庫)

  8月25日 (上等なひまつぶし 見る)ハモンハモン(『クロワッサン』)(→『二丁…』)

  8月25日 文庫本『ラスト・ワルツ』(角川文庫)

  9月20日 単行本『移動遊園地』(中央公論社)

 10月     (今月のエッセイ もうひとつのあとがき)「陽差しの関係」を書いた頃(『IN・POCKET』)(→未収録)

 10月15日 文庫本『陽差しの関係』(講談社文庫)

 10月15日  解説(常盤新平『そうではあるけれど、上を向いて』講談社文庫)

 10月15日  解説(酒井順子『丸の内の空腹』角川文庫)

 11月     上野の森(『新刊ニュース』)(→『二丁…』)

 11月     男と女の思いをこめた物語(書き下ろし)(『プロポーズの言葉』)  12月     銀婚式(『オール讀物』)(→『おけら』)

 12月     (贈る)一にジャガイモ、二に玉蜀黍(『サントリークォータリー』)(→『二丁…』)

 【連載 作品】

 「CUT COLUMNS」 『CUT』 (永倉万治 写真入り)

   1月 舞の海もこうだった?みんながみんなスポ根少年だった'60年代の格闘技通信。(→『食後…』)
   3月 貴りえ婚約解消?長島親子巨人入団?現実が噂を超える世紀末でも、誰もが身に覚えがある”小さな嘘について”。(→『晴れ…』)
   5月 みんなが知ってるけど誰にも言えない。絶望と解放が交錯する、あの辛い話。(→『食後…』)
   7月 さまざまな記憶と共に甦る匂い・香い・臭い――永倉版『時をかける少女』。(→『食後…』)
   9月 長くなったり短くなったり、時代の風に吹かれて 変わり続けたヘア・スタイル奮闘記。(→未収録)
  11月 居酒屋にいるオヤジの愚痴を聞いたことがありますか?男なら誰もが思い当たる空想癖について。(→『食後…』)

 「アスリート物語」 『銀座3丁目から』 (永倉万治 イラスト=真鍋太郎)

   1月 M (→未収録)
   2月 最終回 (→未収録)

 「武蔵野アマルコルド」 『エスクァイア』 (永倉万治 絵=小島武)

   1月 D (→『武蔵野…』)
   2月 E (→『武蔵野…』)
   3月 F (→『武蔵野…』)
   4月 G (→『武蔵野…』)
   5月 H (→『武蔵野…』)
   6月 I (→『武蔵野…』)
   7月 J (→『武蔵野…』)
   8月 K (→『武蔵野…』)
   9月 L最終回 (→『武蔵野…』)

 「食後は眠い」 『月刊 専門料理』 (永倉万治 イラスト/スズキコージ)

   3月 新連載 あの日、インドのカレーに 脳天を撃たれた(→『食後…』)
   4月 第2回 「二十歳の冒険」そして 忘れられないそばの味(→『食後…』)
   5月 第3回 臓物入りお粥を食べながら ぼくはタイで女衒になった(→『食後…』)
   6月 第4回 ラビオリの 缶詰を見ると思い出す、孤独に弱い女好きのマルコ(→『食後…』)
   7月 第5回 女主人が教えてくれた オステンドのムール貝(→『食後…』)

   8月 第6回 三日で飽きた チーズと牛乳だけが たっぷりある退屈な村(→『食後…』)
   9月 第7回 逃げても逃げても 嫌な奴に出くわす セビーリァの迷路(→『食後…』)
  10月 第8回 駅でいっしょに 夜を明かしてくれた グラナダの気のいい不良たち(→『食後…』)
  11月 第9回 チューリッヒのフォンデュは 無念悔恨の味(→『食後…』)
  12月 第10回 泊った家の老夫婦につれられて ぼくは教会に出掛けてみた(→『食後…』)

 「黄金バット」 『IN・POCKET』 (永倉万治 え・川本ゆうこ)

   7月 新連載小説 (→『黄金…』)
   8月 連載小説2 (→『黄金…』)
   9月 連載小説3 (→『黄金…』)
  10月 連載小説4 (→『黄金…』)
  11月 連載小説5 (→『黄金…』)
  12月 連載小説6 (→『黄金…』)

 【参考 作品】

  1月     今月登場(『小説現代』)

  1月     仕事場だより(『小説中公』)

  1月     日常をあおぎ見る (書評)文・中野翠(『波』)(→『ムテッポー文学館』)

  3月     ([病気]を愉しめ!)脳溢血からの帰還(インタビュー記事)(『宝石』)

  3月04日  (BOOKS 著者インタビュー)永倉万治『結婚しよう』文/黒島善久(『週刊アサヒ芸能』)

  5月     仕事場だより(『小説中公』)

  5月25日  脳溢血で倒れて残ったのは、書くことだけ。天職!心が軽いよ。(インタビュー記事)(『クロワッサン』)

  6月     厄年に脳溢血で倒れ、奇跡的に生還する――永倉万治さん・作家・四十五歳(取材記事)(『ソフィア』)

 11月     (家族の健康)危険因子は、不規則な生活(インタビュー記事)(『ミセス』)

 11月07日  (らいぶらりぃ 今週の三冊)切ない、忘れがたい思い出 永倉万治『移動遊園地』文/内海隆一郎(『サンデー毎日』)


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