永倉万治 年譜(48)
永倉万治 年譜(48)

永倉万治 年譜(48)・1994年

2010/05/27

   ☆ 1994年(平成6)・ 46 歳(小説家時代)

 【社会の動き】

 流 行:同情するならカネをくれ、価格破壊、ヤンママ、就職氷河期、ゴーマニズム、コメパニック。

 テニスの伊達公子が海外初優勝(1月)、米。ロスアンゼルスで大地震(1月)、大阪の愛犬家5人の連続失踪・死体遺棄事件で、容疑者逮捕(1月)、国産大型ロケットH2の打ち上げ成功(2月)、コメパニック拡大(3月)、京都・大田南5号古墳から青龍3年銘(235年)青銅鏡が出土。邪馬台国論争再燃(3月)、映画「シンドラーのリスト」がアカデミー賞で7部門受賞(3月)、輸入血液製剤からのエイズ感染患者らが帝京大名誉教授を告発(4月)、中華航空140便が名古屋空港で墜落炎上。263人死亡(4月)、英仏海峡で全長50キロのユーロトンネル開通(5月)、南氷洋での捕鯨全面禁止決定(5月)、巨人・槙原投手、完全試合達成(5月)、PL法成立(6月)
 向井千秋、日本人女性初の宇宙飛行(7月)、青森・三内丸山遺跡で巨大木柱出土(7月)、ディスコ「ジュリアナ東京」が閉店(8月)、米・大リーグがストライキでシーズン打ち切り(8月)、関西国際空港の開港(9月)、北海道東方沖地震。M8.1(10月)、巨人と中日が史上初の同率での最終戦直接決戦、巨人優勝(10月)、ソウルで聖水大橋が落下。32人死亡(10月)、1ドル96円11銭となり、戦後の円最高値を更新(11月)、大江健三郎のノーベル文学賞受賞(12月)

 【生活 年譜】

 『CUT』や『月刊 専門料理』の連載エッセイが好調、自伝小説「黄金バット」の連載に手応えを感じ、そのうえ新連載も始まる。
 病後の回復もリハビリの効果がみられ、日常生活はなんとかこなせるようになる。まずまず順調な日々が続く。
 脳溢血の体験記を一度は書いたが、その後は辛い日々を思い出しすようなことはしたくなかった。
 しかし今は、執筆でも体の回復でも、自信が持てるようになり、自分の体験が少しでも役に立つならばと、雑誌の取材やテレビ・ラジオの番組にも前向きに取り組む。
 『週刊朝日』、『清流』、『自由時間』、『ソフィア』、『シニアウエイブ』などのインタビューを受ける。
 文化放送「梶原茂の本気でDONDON」、NHKテレビ「くらしジャーナル」に出演をする。

  ≪『大熱血闘病記』という本を書いた時、こんなことがあった。
 これは文字どおり彼が倒れてから退院するまでの話だが、最初、角川書店から闘病記を書かないかといわれた時、彼はあまり乗り気ではなかった。
 あのつらい日々を思い出したくないのと、病気を売り物にしたくないという彼なりの意地からだった≫作133『万治クン』p183

  ≪闘病記を書き終わった時、これを最後に辛い日々のことはすべて忘れようと決めていた≫作34『大復活』p3

  2月 『月刊 ef』(エフ)に新連載を開始。'96年1月号まで24回続く。

  ≪毎月「ef」誌に原稿用紙十枚のボーイ・ミーツ・ア・ガールの物語を書いてきた。こういうラブストーリーが訳もなく、好きだ。理由などない。こうして一冊の本にまとまると、とてもいい気分だ≫作29『二人……』p222

  2月 第15回吉川英治文学新人賞にノミネートされる。残念ながら受賞ならず。

  ≪第15回吉川英治文学新人賞(平成6年/1994年3月3日決定発表、対象候補作7篇)
   選考委員:井上 ひさし、尾崎 秀樹、佐野 洋、野坂 昭如、半村 良
   受賞 薄井ゆうじ 『樹の上の草魚』 平成5年/1993年8月・講談社刊
   受賞 東郷 隆 『大砲松』 平成5年/1993年12月・講談社刊
   候補 永倉万治 『結婚しよう』 平成5年/1993年1月・新潮社刊 など。≫ネット「付録−吉川英治文学新人賞受賞作・候補作一覧」より作成

  5月 13日、NHKテレビの「くらしジャーナル」にゲスト出演。脳溢血体験を語る。

  ≪くらしジャーナル 元気がいちばんヘルシートーク 「よし!書き続けよう 作家・永倉万治」
  内容紹介:脳溢血で倒れ失語、右半身マヒになった作家の永倉万治さんはその後の努力で立ち直り執筆活動にリハビリに励んでいる。その闘病体験談を聞く≫ネット「NHKアーカイブス保存番組検索」より作成

  7月 宮城県・峨々温泉へ取材をかねたのんびり温泉旅行。ガスで見えない蔵王のお釜をバックに写真撮影。

  ≪Sさんが(取材先に)選んでくれた温泉は、宮城蔵王にある秘湯、峨々温泉の一軒宿で、その名も峨々温泉であった。(略)
  一緒に行くのは、カメラマンの戸澤氏だという。「二人だけなの?」「ええ、そうです。全部おまかせください」とカメラマン氏は明るくいった。(略)
  (蔵王の)”お釜”の頂上に立っている僕の周りは、ガスがあるばかりで何も見えなかった。(略)
  (カメラマンに)いわれるままに記念写真に納まった。恐らく背景はガスで、どこだかまるでわからない写真になるだろう≫作30『食後……』p190

  8月 初めて監修を頼まれた『家族を幸せにする死に方』が発行。「はじめに」と「おわりに」を寄稿。

  ≪この本は、死に関する現実的に考えられる限りの情報を集めた本である。
  遺言、お墓、戒名のランクからはじまり、尊厳のある死についてなどなど。せめて年に一度くらいは、こういう本を読んで自分の死に思いをいたすのもいいのではないか。
  やがて誰にも死が訪れる時はくる≫作102『家族……』p214

  9月 18日、『朝日新聞』と『讀賣新聞』にナショナルの家電に関する製品広告小説を連載。全11回。

  ≪National 新製品小説@ 森島家、登場 永倉万治 北谷しげひさ画≫『朝日新聞』、『讀賣新聞』1994.9.18

  ?月 文化放送「梶原茂の本気でDONDON」にゲスト出演。脳溢血とその後のリハビリについて多いに語る。

  ≪倒れてから五年たった。失語症もひところに比べるとだいぶ回復していた。
  倒れる前に出演していた文化放送の「梶原しげるの本気でDONDON」から、再びゲストに呼ばれることになった。(略)
  (無事、ゲストを務めた。)ようやくラジオに出演してまともにしゃべれたのだ。落ち込むこともなかった。これなら成功だなと僕は密かにそう思った。(略)
  「永倉さん、書く方が本業なんだから、そんなにうまくならないでよ。(略)」(と梶原さんは励ましてくれた。)
  その日は久しぶりに晴れやかな気持ちで家に帰った≫作34『大復活』p41

  ?月 鉄の胃袋と虫歯なしが日ごろの自慢。

  ≪幼いうちはよく腹をこわしていたが、小学校に上がる頃になると体質が変わったのか、急に胃腸が強くなった。以来、鉄の胃腸を誇ってきた。四十六になるが虫歯もない。(略)
  どこに行ってもその土地の食い物を何でも食べるようになった。あれは嫌いだとか、つべこべいわない。何でも食う。そしてどこにでも寝る。(おかげで、太りやすくなった)≫作30『食後……』p163

 【作品 年譜】

  1月     (家族の食卓)宗旨がえ(『現 代』)(→未収録)

  1月     銀 杏(『小説新潮』)(→『どいつ…』)

  1月若水号  (やちむんを訪ねて)読谷やちむん紀行(『コーラルウェイ』)(→『食後…』)

  1月     (東京赤貧「悦楽」グルメ)「ときわ食堂」二日酔いにオムライスとアサリのみそ汁(『宝 石』)(→未収録)

  1月25日 (何があっても観るテレビ、何があっても聴くラジオ)今のテンポと昔のゆっくりしたリズム。ラジオでその落差を楽しむのが好きだ。(『クロワッサン』)(→未収録)

  2月     南薩の人々(『ウインズ』)(→『食後…』)

  3月     誕生日(『小説新潮』)(→『どいつ…』)

  3月     (ESSAY)障害者手帳(『NFU』)(→未収録)

  3月     どんなに素敵な「不良少年」にも勝るもの(『カデット』)(→『食後…』)

  3月15日 文庫本『アナタの年頃』(講談社文庫)

  3月18日 朝食をめぐる男の憂鬱(『an・an』)(→未収録)

  4月     (偏差値の正体)妻の反論(『Voice』)(→『食後…』)

  4月     同窓会(『れいろう』)(→『二丁…』)

  4月     (十人十旅)京都、十五年ぶりの再会(『旅』)(→『二丁…』)

  4月15日  解説(来生えつこ『野ばらたち』講談社文庫)

  5月20日  長生きしたい(『ライトアップ』)(→『食後…』)(未見)

  5月25日 単行本『武蔵野S町物語』(新潮社)

  6月     (理想の死に方)最後の言葉(『小説現代』)(→『食後…』)(→『隣の…』)

  7月     南の島(『小説新潮』)(→『どいつ…』)

  7月04日 文庫本『神様の贈り物』(河出文庫)

  8月     脳溢血で倒れると利口になる(『婦人公論』)(→『食後…』)

  8月     一九七三年のサッカー(『銀座百点』)(→『食後…』)

  8月01日 はじめに、おわりに(永倉万治監修『家族を幸せにする死に方』)

  9月     (わがダイエットとの戦い)やっと見つけた究極のダイエット(『オール讀物』)(→『食後…』)

 10月     (ミューズたちの再臨)ソフィア・ローレン 極東少年のいけない夢(『PLAYBOY』)(→『食後…』)

 10月     (錦繍の露天風呂大図鑑)みちのく湯治宿、ぼんやり温泉三昧(『旅』)(→『食後…』)

 10月     二重瞼(『Mil』)(→『二人…』)(未見)

 10月25日 (男たちの意見・いい女とそうではない女についての言いたい放題)40代の女性にはそんじょそこらのネエチャンに負けない魅力がある。(『クロワッサン』)(→『食後…』)

 10月25日 文庫本『父帰る』(角川文庫)

 11月     (check the V zone!)ネクタイに関する三位一体の思い出。(『エスクァイア』)(→『食後…』)

 12月     (想い出の町)黒衣の女 ―タンジール(『小説中公』)(→『二丁…』)

 【連載 作品】

 「CUT COLUMNS」 『CUT』 (永倉万治 写真入り)

   1月 ボンナイフに銀の指輪にケネディコイン。引き出しの中に眠る、捨てるに捨てられない物について。(→『食後…』)
   3月 喧嘩も弱けりゃ人目にもつかない。だけど忘れられない、ある不良少年のこと。(→『食後…』)
   5月 イラン人との闘いを救った一冊のデンマーク雑誌。(→『食後…』)
   7月 あなたには”泣きボタン”がありますか?堂々と泣くことのできない日本男児に送る、永倉流”カッコいい男の泣き方”について。(→『食後…』)
   9月 焦燥と挫折に苛まれた27歳のあの夏の日。とある老賢者が授けてくれた珠玉の箴言とは?(→『食後…』)
  11月 恨みかたたりか憑きものか?戦慄!酒瓶割り男の悲劇。(→『食後…』)

 「食後は眠い」 『月刊 専門料理』 (永倉万治 イラスト/スズキコージ)

   1月 第11回 軍用缶詰の肉を食べて知った英国紳士の味覚(→『食後…』)
   2月 第12回 メランコリックな商社マンに奢られた髄のとろけるオーソ・ブッコ(→『食後…』)
   3月 第13回 ピサで出会った”余生”を女に賭ける男(→『食後…』)
   4月 第14回 フィレンツェの「色」に感動する男とボッティチェッリの「春」に泣く女(→『食後…』)
   5月 第15回 涙するほどうまさがこたえた何の変哲もないスパゲッティ(→『食後…』)
   6月 第16回 子供の好きなカナダ人レスラーは猫の撮影に夢中だった(→『食後…』)
   7月 第17回 油断ならないナポリの下町の愛すべきこそ泥たち(→『食後…』)
   8月 第18回 イワシを挟んだパンを手に漁師とすごしたシチリアの浜辺の午後(→『食後…』)
   9月 第19回 大揺れに揺れた甲板で明かした地獄のような連絡船の一夜(→『食後…』)
  10月 第20回 思わぬ足止めが縁で出会った気のいいギリシャ人とムサカの味(→『食後…』)
  11月 第21回 拍子抜けするほど普通の国、イスラエルでミートボールを挟んだピタを頬張る(→『食後…』)
  12月 最終回 キャベツ畑で働いた後ビートルズと酒に酔いしれたあのキブツでの一夜(→『食後…』)

 「黄金バット」 『IN・POCKET』 (永倉万治 え・川本ゆうこ)

   1月 連載小説 7 (→『黄金…』)
   2月 連載小説 8 (→『黄金…』)
   3月 連載小説 9 (→『黄金…』)
   4月 連載小説10 (→『黄金…』)
   5月 連載小説11 (→『黄金…』)
   6月 連載小説12 (→『黄金…』)
   7月 連載小説13 (→『黄金…』)
   8月 連載小説14 (→『黄金…』)
   9月 連載小説15 (→『黄金…』)
  10月 連載小説16 (→『黄金…』)
  11月 連載小説17(最終回) (→『黄金…』)

 「 ? 」 『月刊 ef』 (永倉万治 画・?)

   2月 第1回 ? (→『二人…』「来年の年賀状」)(未見)
   3月 第2回 ? (→『二人…』「ねえちゃんフラれたの?」)(未見)
   4月 第3回 ? (→『二人…』「転職しようかな」)(未見)
   5月 第4回 ? (→『二人…』「夜のドライブ」)(未見)
   6月 第5回 ? (→『二人…』「ランプを買いにきた男」)(未見)
   7月 第6回 ? (→『二人…』「バイク便」)(未見)
   8月 第7回 ? (→『二人…』「カンの鋭いわ・た・し」)(未見)
   9月 第8回 ? (→『二人…』「二人でボサノバ」)(未見)
  10月 第9回 ? (→『二人…』「辺境が好き」)(未見)
  11月 第10回 ? (→『二人…』「プール」)(未見)
  12月 第11回 ? (→『二人…』「ジョージ」)(未見)
  (『二人でボサノバ』の巻末にある「初出誌『月刊ef』(主婦の友社)'94年2月号〜'96年1月号」の記事により24篇の連載がわかる。とりあえず単行本収録順に作品名を記載。未見のため詳細は不明)

 「 ? 」 『VISA』 (永倉万治 画・?)

   9月 第?回 ? (→『二丁…』「S町のこと」)(未見)
  10月 第?回 ? (→『二丁…』「美術館に行きたい」)(未見)
  11月 第?回 ? (→『二丁…』「不思議な食事の風景」)(未見)
  12月 第?回 ? (→『二丁…』「タバコの思い出」)(未見)
  (『二丁拳銃でドカン!』の作品末にある初出誌(『VISA』)記事により14篇以上の連載('94.9〜'96.5)がわかる。未見のため詳細は不明)

 「新製品小説」 『朝日新聞』と『讀賣新聞』 (永倉万治 画・北谷しげひさ)

      朝日  讀賣 
   9月18日 ・18日 @ 森島家、登場(→未収録)
   9月25日 ・25日 A お弁当で勝て(→未収録)
  10月 1日 ・ 2日 B 洗濯する夫(→未収録)
  10月 7日 ・12日 C 陽子、掃除しなさい(→未収録)
  10月22日 ・16日 D 不意の来客(→未収録)
  10月26日 ・23日 E 思い出のアイロンかけ(→未収録)
  10月30日 ・29日 F 暖房が入った午後(→未収録)
  11月 7日 ・ 5日 G 今夜は、すき焼き(→未収録)
  11月13日 ・12日 H 食後は愉快に(→未収録)
  11月20日 ・19日 I あったかくしておやすみ(→未収録)
  12月 3日 ・30日 J 家庭菜園へ行こう(→未収録)

 「男はみんなギックリ腰」 『小説すばる』 (永倉万治 illustration・小沢利夫)

  12月 第一話 月の砂漠で二重奏(→『…ギ腰』)

 【参考 作品】

  2月03日  (著者から著者へ 来生えつこ→永倉万治)『結婚しよう』/やさしさに溢れた物語。”これが人生さ”って感じね(『自由時間』)

  2月17日  (著者から著者へ 永倉万治→玉村豊男)『有悠無憂』/本物のアウトドアライフ。正直いって嫉妬しています(『自由時間』)

  3月04日  (夫婦の階段)カムバック・ストーリーの立役者 夫・永倉万治 妻・長倉有子 文/太田雅子(『週刊朝日』)

  3月25日  (わが家の夕めし)夕食に向う平凡な喜び”炬燵でちまちま”がいい(グラビア)(『アサヒグラフ』)

  5月     夫婦で歩む人生 生かされて、共に生きる歓び 永倉万治・有子さんご夫妻 文/桜井友紀子(『清流』)

  5月01日  (帯の惹句文)読んだら必ず聞きたくなる (萩原健太『萩原健太のポップススクラップブック』)

  5月27日  (ひと目惚れされない女は、どんなタイプ?何が原因?)下手な話し方は男をメゲさせるだけ。相づちひとつでも大きな差が。(インタビュー記事)(『an・an』)

  6月     今月登場(『小説現代』)

  7月21日  (私の病気体験U 脳溢血)体育会系のド根性でリハビリに挑む 文/奥山夏美(『自由時間』)

  8月     (アンケート107人の作家に聞きました)あなたの生命は明朝まで!だとしたら、今晩のメニューは? 97 永倉万治(『小説すばる』)

  9月     (夫婦の肖像)永倉万治さん・長倉有子さん 妻の辛口ジョークに励まされ、作家活動の第一線に復帰(取材・関明子)(『ソフィア』)

 11月第31号 (この人にきく)「弱音なんか吐くもんか」そう言い聞かせて再び書けるようになりました インタビュアー・河幹夫(『シニアウエイブ』)

 11月25日   汗っかきの夫、サッカーで汚す息子、毎日、洗濯物の山と奮闘中です。 永倉万治さん・長倉有子さん(取材記事)(『クロワッサン』)

 12月     (特集”暇” あなたにとっての暇とは?)作家・永倉万治(アンケート記事)(『サントリークォータリー』47)


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