永倉万治 年譜(52)
永倉万治 年譜(52)

永倉万治 年譜(52)・1998年

2010/10/03

   ☆ 1998年(平成10)・ 50 歳(小説家時代)

 【社会の動き】

 流 行:だっちゅーの、貸し渋り、モラル・ハザード、ノーパン・シャブシャブ、バイアグラ、不適切な関係、桃の天然水、100円ショップ 。

 さくら銀行の2万人の顧客データを盗んだコンピュータソフト会社の男を逮捕(1月)、奈良・黒塚古墳から三角縁神獣鏡32枚出土、邪馬台国問題再燃(1月)、長野冬季五輪開幕、スピードスケート清水宏保が金メダル(2月)、ダイエーが2月期250億円の赤字発表(2月)、米でインポテンス治療薬「バイアグラ」を認可(3月)、明石海峡大橋が開通(4月)、田村亮子が全日本女子選抜体重別選手権48キロ級で8連覇達成(5月)、米・高校で男子生徒が銃を乱射(5月)、サッカーW杯・フランス大会が開幕。日本初参加(6月)
 ロス疑惑で無罪判決(7月)、和歌山・カレー毒物混入事件、4人死亡(7月)コンテナ密航で中国人8人死亡(8月)、北朝鮮が弾道ミサイル1発を発射、太平洋に着弾(8月)、黒澤明が脳卒中で死亡。88歳(9月)、NTTドコモの株式上場、初値460万円(10月)、青梅市で740万円がATMごと盗難(11月)、ミキモト銀座本店で時価1億円相当のレッド・ダイヤモンド 盗難(12月)

 【生活 年譜】

 小説では、『週刊小説』に不定期連載している「男と女のいる風景」のほかに、『小説現代』に新連載「インポテンス」を始め、完結まで書き上げる。『小説すばる』、『オール讀物』、『小説新潮、』『小説宝石』などに精力的に小説を書く。

 エッセイでは、『CUT』、『NAVI』の連載のほかに、『日経ヘルス』に新連載「アナタに似たひと」をはじめる。久々のアナタの文体である。

 単行本4冊、文庫本1冊を刊行し、気力、体力の充実を感じるが、出版業界の状況は厳しく、思うようにならないことも多くなる。

 占い師のアドバイスにより、ペンネームを「万治」から「萬治」へ改名する。11、12月に一部使うが、本格的な使用は翌年からになる。

 テレビ朝日の「徹子の部屋」に出演し、病気の苦労話を明るく話し、同病者に勇気と希望をあたえる。

  ≪(不況状況を打破するには、占い師の)Nさんは、名前を変えるのも一つの方法だと彼に告げ、「永倉萬治」と書いて見せた。「万治」はたしかに良い名前だが「萬治」にすればもっと多くの人から支持されると彼女はいう≫作133『万治クン』p208

  ≪(プロデュ―サー山下達也のメッセージ)永倉万治さん NHKドラマ「父帰る」のモデルでもある。「絶対、元気になってやる!必ずやまた小説を書く!」強い意志がなければこんな「リハビリ」到底やっていけない。途中何度も絶望したという。改めて、人間の意志の強さ・大きさに感動しました≫ネット「徹子の部屋」1998年3月10日。(現在削除)

  1月 正月はテレビ漬けの毎日。

  ≪昨年末にかけて、『男はみんなギックリ腰』(集英社)、『大復活』(講談社)と、たてつづけに上梓した永倉さん。三が日は寝正月ならぬテレビ正月とかで、ほぼ毎日起きている間はどっぷりテレビ漬け。息抜きより疲れた!?≫『週刊小説』「筆者の近況」(1998年1月23日号)

  3月 10日、テレビ番組「徹子の部屋」に出演。

  ≪テレビ朝日 1:20 徹子の部屋 言葉と半身まひ克服した作家・永倉万治≫『讀賣新聞』(1998.3.10)のテレビ番組表

  3月 原宿で”上海の玉三郎”こと林鴻志さんに会う。

  ≪三月の中旬。(略)原宿の町でその男(中国人の林鴻志)と会った。(略)彼は正真正銘のゲイである。(略)
  (波乱万丈の話の末に)「結婚したい。本当、子供も欲しいんです(略)それともいっそ、完全に女になる手術をしようかとも思うし……いま、迷ってるんです」と彼は玉三郎顔を僕に向けて告白した。うーん≫作39『…隣の…』p227

  4月 24日、NHKテレビ「生活ほっとモーニング」に出演。

  ≪心に残るお見舞い〜励ましとマナー〜
  内容紹介:女優の吉行和子さん、歌手、ダ・カーポの榊原広子さん、作家の永倉万治さん、それぞれの入院の経験から、どんなお見舞いが嬉しいのか、どんな言葉が心に響き、残るのかなど励ましのしかた、お見舞いのマナーを学ぶ。お見舞いの品物やタイミング、ナースセンターへの相談の仕方なども≫ネット「NHKアーカイブス保存番組検索:生活ほっとモーニング」

  5月 仕事も体調もよく、散歩に精を出す。

  ≪『満月男の優雅な遍歴』(光文社刊)上梓後、「徹子の部屋」やNHKTV出演などが続いた他は、暖かくなったので散歩に精を出しながら執筆という生活≫『小説現代』「今月登場」(1998年5月号)

  5月 恒例になった飯能行き。

  ≪五月連休に、永倉さんはよく行く飯能に一泊二日で出かける予定だ。知人の陶芸家の個展を見に行くのだが、地元の演奏家がその晩に尺八を吹いてくれるのも楽しみのひとつ。陶器を愛で、尺八演奏に浸る優雅な一夜だ≫『週刊小説』「筆者の近況」(1998年5月15日号)

  6〜7月 サッカーワールドカップ・フランス大会のテレビ観戦に熱中。終了後の虚脱感。

  ≪連日睡眠不足が続いた。その原因は熱帯夜ではなくW杯。全試合をテレビ観戦した大のサッカーファンである氏にとって、今は祭りのあとのサビシサ≫『小説現代』「今月登場」(1998年8月号)

  9月 ヨーロッパ放浪の旅で、はじめの頃一緒に行動した同級生の米田君と30年ぶりに再会をする。

  ≪九月の初旬、その米田と再会することになった。(略)
  三十年ぶり見る米田は多少髪に白いものが混じっているが、以前とあまり変わりがなかった。
  (彼が言う。ヨーロッパで遊びまわったが、)俺もおやじの深慮遠謀にひっかかったクチだ。好きなことをやってるつもりだったが、(帰国して)気がついたら家業が待っていた。それよ≫作39『…隣の…』p200

 10月 釜石を訪れ、井上マスさんの墓参りをする。

  ≪十月の中旬、釜石に行った。(略)
  小高い丘の上にある井上マスさんの墓に花を供え、合掌した。
  マスさん、やっと来れました。(丘の上は爽やかな風が吹いていて、)いい気分だった≫作39『…隣の…』p121

 10月 ペンネームを「万治」から「萬治」へ改名。

  ≪このたび、知り合いの占い師のアドバイスもあり、名前の一字を「万」から「萬」へと改めた永倉さん。「こんな不景気な世の中は、名前を変えて突き進んでいくのがいちばん」と決意を新たにした≫『週刊小説』「筆者の近況」(1998年12月11日号)

  ≪永倉は我が意を得たりと笑い、あれよあれよという間に「永倉萬治」が誕生した。それが一九九八年十月で、一ヵ月後には早くもこちらの名前で本が出ている。題名は『インポテンス』≫作133『万治クン』p209

 10月 再び、飯能へ遊びに行く。

  ≪本誌好評連載の「インポテンス」が堂々完結。英気を養うため埼玉県秩父の友人宅へ。「秩父は知る人ぞ知るホルモン焼のメッカなんですよ」とのこと≫『小説現代』「今月登場」(1998年10月号)

 11月 仕事の合間の酒が何よりの愉しみの今日この頃。

  ≪月刊誌の連載が終わりほっとしたのもつかの間、さっそく単行本化に向け校正に追われた。仕事の合間をぬって、また最近少しずつ飲むようになったお酒がおいしくて……。『インポテンス』(講談社)は一二月刊行予定≫『週刊小説』「筆者の近況」(1998年11月13日号)

 【作品 年譜】

  1月     倒れて八年(『本』)(→未収録)

  1月     暴風雨の予感(『小説すばる』)(→『あぁ…』)

  1月     シベリア寒気団の夜(『オール讀物』)(→『これで…』)

  1月     飲みたいのに止められているんだよ(『BRUTUS FAVORITE WINE BOOKV』)(→未収録)

  2月25日  単行本『満月男の優雅な遍歴』(光文社)

  2月25日  解説(鷺沢萠『F 落第生』角川文庫)

  3月     雪の降るまちを(『小説新潮』)(→『どいつ…』)

  3月     (作家と書簡)節目と音信(『一冊の本』)(→『…隣…』)

  4月     (男のエッセイ)赤ワイン(『月刊ABIERTO』)(→未収録)

  4月     新しい自転車(『小説すばる』)(→『あぁ…』)

  4月10日  町から町へ放浪した二十歳の僕(『後悔しない学生時代の過し方』)(書き下ろし)

  6月     タイランド(『小説すばる』)(→『あぁ…』)

  6月     (カーテンコール)ある日、突然――。(『小説すばる』)(→未収録)

  6月07日 (もう一度、夫を見直してみよう)妻に頭が上がらない夫、というのもいいものだ(『婦人公論』)(→『…隣…』)

  6月25日  単行本『ポチャポチャの女』(実業之日本社)

  7月     つくづく10年、爽やか気分(『くらしと保険』夏号)(→未収録)

  7月25日 (真夏の夜のちょっと怖い話)歩く女(『クロワッサン』)(→未収録)

  8月     (健康になりたい!)四十分の「朝の行事」(『オール讀物』)(→未収録)

  8月25日  解説(景山民夫『オンリー・イエスタデイ』角川文庫)

  9月     (短篇小説招待席)セロリ(『一冊の本』)(→『これで…』)

  9月16日  絶望の中でようやく読み通せた三冊の本(『病院で読むということ』)(書き下ろし)

  9月20日  単行本『どいつもこいつも』(新潮社)

 10月     愛犬ロズベイのこと(『RETRIEVER』)(→『…隣…』)

 10月     (折々のおんな)やつれた女(『小説宝石』)(→未収録)

 10月     (コラム招待席)想い出TVジョン「パパは何でも知っている」(『小説新潮』)(→未収録)

 11月     サイパン島(『小説新潮』)(→『これで…』)

 11月30日  単行本『インポテンス』(講談社)

 12月01日  文庫本『二人でボサノバ』(小学館文庫)

 【連載 作品】

 「CUT COLUMNS」 『CUT』 (永倉万治 イラスト=北谷しげひさ)

   1月 イラン人のナクイおばさん、あなたに神の御加護がありますように。(→『…隣…』)
   3月 38年の時を越えた僕ら、志木小学校6年1組。(→『…隣…』)
   5月 最終回。”上海の玉三郎”が愛と冒険に満ちた半生を語ってくれた。(→『…隣…』)

 「男と女のいる風景」 『週刊小説』 (永倉万治、12/11号より永倉萬治 え・百田まどか、5/15号より真鍋太郎)

   1月23日 バイヤコンディオス (→『ポチャ…』)
   5月15日 香 港   (→『人の…』)
  11月13日 今日の運勢 (→『人の…』)
  12月11日 猫の文鎮  (→『人の…』)
  (このシリーズは不定期連載の短篇集である。全15作。)

 「隣にいるヒト」 『NAVI』 (永倉万治 イラスト=ひらいたかこ、11月号から河村アキラ)

   1月 大塚のヒクソン・グレイシー(→『…隣…』)
   2月 カ キ (→『…隣…』)
   3月 リア王 (→『…隣…』)
   4月 痛 風 (→『…隣…』)
   5月 女友達(→『…隣…』)
   6月 ローラースケート(→『…隣…』)
   7月 日本海(→『…隣…』)
   8月 猫が逃げた   (→『…隣…』)
   9月 手が早かった?(→『…隣…』)
  10月 倒産屋が天職 (→『…隣…』)
  11月 笹吟の夜    (→『…隣…』)
  12月 釣りは嫌いだ  (→『…隣…』)

 「アナタに似たひと」 『日経ヘルス』 (永倉万治 写真・奈良岡忠)

   4月 @(→未収録)
   5月 A(→未収録)(未見)
   6月 B(→未収録)
   7月 C(→未収録)(未見)
   8月 D(→未収録)(未見)
   9月 E(→未収録)(未見)
  10月 F(→未収録)(未見)
  11月 G(→未収録)(未見)
  12月 H(→未収録)(未見)

 「インポテンス」 『小説現代』 (永倉万治 絵・灘本唯人)

   5月  1〜 5(→『インポ…』)
   6月  6〜11(→『インポ…』)
   7月     休 載
   8月 12〜16(→『インポ…』)
   9月 17〜18(→『インポ…』)
  10月 19〜23(完)(→『インポ…』)

 【参考 作品】

   1月19日  (病を語る)永倉万治さん 49 (作家)煩悩が生きる力 文・秀(『讀賣新聞』)

   1月23日  筆者の近況(『週刊小説』)

   3月     赤瀬川原平の今月のタイトルマッチ(『男はみんなギックリ腰』評)(『花椿』)

   4月06日 (シリーズ 熱球フリーク お立ち台!)永倉万治(作家)
          「ビールとそら豆とナイター中継。これこそが中年男の極楽だった」(インタビュー記事)(『週刊ベースボール』)

   4月09日 (Hoseki Book Center)満月男の優雅な遍歴 取材・文/大多和伴彦(『週刊宝石』)

   5月     今月登場(『小説現代』)

   5月15日  筆者の近況(『週刊小説』)

   8月     今月登場(『小説現代』)

   9月     (作家の一日)永倉万治氏の巻 文・K(『波』)

  10月     今月登場(『小説現代』)

  11月13日  筆者の近況(『週刊小説』)

  12月11日  筆者の近況(『週刊小説』)


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