万治くらぶ/第368号
万治くらぶ

第368号

2013/05/12

▲万治なんでも雑記帖(158) 長嶋茂雄、国民栄誉賞受賞

 5月5日に長嶋茂雄と松井英喜が国民栄誉賞を受賞した。

 その模様がテレビで放送され、ニュースで長嶋と縁の深い直木賞作家のねじめ正一がコメントを言っていた。

 このことは、直接、永倉万治とは関係ないが、まるごと一冊長嶋茂雄を書いた本のことを思い出した。

 玉木正之の『定本・長嶋茂雄 長嶋なんて、いなかった。』(1989・ネスコ)である。

 この本は、玉木の発案で、いろいろな著名人に長嶋茂雄ことを書いてもらったものを編集したものである。

 そのなかに、ねじめ正一がいて、永倉万治もいる。

 やっと、永倉万治につながった。

 どうも私の思考回路は回りくどくていけない。申し訳ない。

 永倉はこの本のなかで、「御存知、ミスター・ナガシマ」を書いている。

 このことは第93号に書いている。

 もう、9年以上も経っているので、前回と別の箇所を選んで、また紹介する。

 永倉万治は長嶋茂雄への熱い気持ちを語っている。

 ≪長嶋の思い出となれば、どうしても、小学生時代にさかのぼる。
  六大学野球で活躍していた頃から、長嶋茂雄はスターだった。
  まことに個人的なことで恐縮だが、小学生の頃から、学校に行くのなら立教と決めていた。≫

 思っただけで、立教に入れれば苦労はいらない。

 万治クンはすごい?ちょっと自慢か?

 ≪僕が中学に入った時は、すでに長嶋は、巨人入団3年目あたりではなかったかと思う。
  開幕デビュー戦の国鉄金田の速球に4打席4三振のデビューも強烈な印象だったし、天覧試合も忘れられない。
  スターになる人間というのは、どこか底が抜けたような派手さを生まれつき持ち合わせているのだと思う。
  金田の投げるボールにかすりもしなかった。
  それだけのことなのに、それが人々に強烈な印象を残す。
  まさしく、スターの証明だった。≫

 その通りと私も思う。

 ショートへ飛んできた打球を、サード長嶋はショート制し、横に飛び出し、彼が華麗にさばく。

 長嶋の美技は人々に強烈な印象を残す。

 そして、ショートは唖然とする。

 スターは、常人とはちがう。

 ≪忘れられないのは、なんといっても背番号の「3」番である。(略)
  ガキの頃に、よく風呂屋にいくと、あの下足札は、必ず「3」番を探した。
  ところが、これがたいてい先客がいて、すでに誰かが「3」番をとっている。
  あれはくやしい。
  仕方なく、当時、かなり落ち目になりかけていた引退間際の打撃の神様、川上の背番号「16」番でガマンする。
  僕は「3」を狙って「16」でおさえる。≫

 私も風呂屋の下足札では、同じような思い出がある。

 ちょっとちがうのは、私の場合は宮本の「40」だった。

 ピッチャーの宮本ではない、日系のエンディ宮本である。

 1961年の日本シリーズ、巨人×南海戦でのエンディ宮本の逆転サヨナラは忘れられない。

 どうも、まことに私ごとで恐縮である。

 ≪放課後の小学校でよくソフトボールをやった。
  そうやってガキどもがボールを追っている校庭に、いつも巨人軍のマークのついた野球帽とバットを手にした兄ちゃんがやってくる。(略)
  そして兄ちゃんは、ただの長嶋のファンだっただけじゃない。
  毎日、放課後の校庭にやってくると、その瞬間から、彼は、長嶋になってしまっていた。
  ボールにかすりもせずブンブンとバットを振り回す時も、守備について、ボールが通り過ぎたあとに、ドッテと体を横に投げ出すしぐさをする時も、彼は、彼ではなく、長嶋になっていたのだ。(略)
  彼こそは、放課後の校庭で、誰よりも熱烈な長嶋ファンであったことを、今にして思い出す。
  あの頃は、誰も彼もが、そうだった。≫

 永倉と同級生だった私には、彼のいうことが、いちいちもっともである。

 巨人、大鵬、玉子焼き。昭和30年代は活気に満ちていた。

 子供も、大人も、熱に浮かされたように夢中だった。

 長嶋さんには、いつまでも元気で、あのときのように我々に活力を与え続けてほしいものである。


  写真上は 国民栄誉賞授賞式の始球式の一場面(ネット「ヤフー・ニュース」掲載の写真:東京スポーツ新聞社配信)
          〔バッター・長嶋茂雄終身名誉監督、ピッチャー・松井秀喜氏、キャッチャー・原辰徳監督、
          球審・安倍晋三首相の豪華メンバーで行われた始球式(5日=東京ドーム)〕

  写真中は 『定本・長嶋茂雄 長嶋なんて、いなかった。』(1989・ネスコ)の表紙

  写真下は 長嶋茂雄の豪快な空振りシーン(ブログ「倉野立人のブログです」2013.5.8より。写真の出典不明)


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