『ウインド』のなかで、永倉万治につながる作品や人物はいないかと探していたら、「竹永茂生」という名前が気になった。編集後記に、「茂生」は「もせい」と読み方が書かれていた。
「もせい」、「もせい」、……、珍しい名前で、どこかで見たような気がする。
「万治くらぶ」の掲載を2012、3年で休止して8、9年も経っているので忘れていた。
うん!? そうだ、寺山修司主宰の「天井桟敷」の一員で、永倉とパリで出会った人物である。
二人のつながりというと、永倉万治が所属していた東由多加の「東京キッドブラザース」は東が寺山から独立した劇団で、永倉が竹永の顔を覚えていた。
その二人が、偶然パリで出会い、それ以来、付き合いが始まったと、竹永氏の「ジギタリス商會Blog」に書かれている。
場所はマロニエの葉が新緑に輝くのカフェテラスである。
《「タケナガ、さん?」
「そうですが…」
「キッドのナガクラです」
その時まで彼とはまったく面識がなかった。
加えて外国では日本人は近親憎悪というのか意外に日本人には声を掛けないもので、
その並でない態度――直裁で、人の懐にスッと入ってきた――の彼に、私は傍らの籐椅子を勧めた。》二人の出会いは映画のワンシーンのようにはじまり、年来の友人のように語りはじめる。
話は飛ぶが、永倉が「マドラ」で働くようになって、その縁で竹永氏に『ウインド』への原稿を依頼したと思われる。竹永茂生「M・ジル・サンジェイが お連れします」は、『ウインド』3-1号にある。
《パリの生活も素敵ですが、フランスの田舎、それも本当の田舎の生活もこれまた素晴らしいものです。》と書き出しにある。
特にサンジェイ氏の別荘で毎月一回行われる集まりが楽しいという。
《サンジェイ氏のお客たちは夕食後ともかく誰でもいい自分の気に入ったパートナーと踊り、そして、その後の更に甘美な時のパートナーを決めるのです。》《ここの休暇は、訪れる人に、人生の始原的な歓びを与えてくれるものに思えます。》
竹永氏の話は彼の体験か、創作かわからないが、田舎暮らしには別世界があるみたいである。
永倉万治もサンジェイ氏の別荘に 連れられて行ったのであろうか。聞いておけばよかった。
永倉万治と竹永茂生には逆の関係もある。『日刊ゲンダイ』の連載で、竹永氏が永倉にインタビューした作品がある。
「私のヰタ・セクスアリス」である。
話は、永倉が高校2年の夏休みに友人三人と訪れた房総の保田海岸での一夜の経験である。
なんだか、「M・ジル・サンジェイ…」と基底のテーマは同じみたいだ。
永倉と竹永氏の共通項は、自由奔放、、興味津々、天真爛漫、精力絶倫などかもしれない。
二人の親交は、永倉が亡くなるまで続いていて、うらやましい限りで、素晴らしい。
写真6:竹永茂生(『東京で流行りの住居学』のカバー)より写真7:『ウインド』3-4号の表紙(1978.4)
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